『チェイサー』

巨匠さんのイチオシということもあり、映画『チェイサー』を本日見て参りました。で、今まだそのダメージがでかすぎて復帰できてないです。


元刑事でデリヘルの元締めである主人公は、自分のもとで働く女達が次々行方不明になったことから、手付金詐欺と見てその手伝いをする男を探すが・・・といったところから話が始まります。韓国の連続殺人事件をもとにあつかているからクライムサスペンス、もしくはサイコサスペンスに分類されるべきなんでしょうが・・・。ただこの映画の場合サスペンスにつきものの怒涛の展開、というのがなくて。行方不明の女性の行方にしても犯人の実像にしても遅々としてたどりてけない。そのもどかしさ、いらだたしさが見てる側も蓄積されるのがいいですねー。


個人的に韓国映画は感情のドロドロを描くのがうまいと思ってまして。ただそれを恋愛映画にされると食指が動かない。もっとサスペンスとかヒューマンも輸入してほしいですねー。



と言うだけだと私がすっきりしないので以下ネタばれつきの感想です↓


うぉわぁあああああああああああああああああ

と何度も叫びたくなました。通常サスペンスにおいては前半にもどかしさをためておいて後半の怒涛の展開でそれを晴らすのが多いですが、この映画はそんなに甘くない。主人公を徹底的に打ちのめす。始まってすぐに犯人を捕まえたにも関わらず、主人公はそこから少しも犯人に迫ることができない。チェイサーというタイトルが皮肉に聞こえるくらいに。主人公の迂遠な捜査も囚われの女性の懸命の努力も、社会の複雑さとちょっとした不運でかき消されてしまう。女性が殺された店で留守電を聞く主人公の無力感たるやいかばかりか。さらに言うならラストシーン。主人公は事件の終了後(解決といえるかどうか)、病室に被害者の子供を見舞に行くが、事実を知ったとしたらあの子は主人公を絶対に許せないと思いますよ。


どうして何もできなかったんだ!という絶望感。捕まえたはずの犯人に対する敗北感。そういった後味の悪さをずっしりと残してくれるいい映画でした。あと最後に一言


警察働け!!!まあ主人公も非協力的だけどさー。