皮の靴

たけのやり、てつのぼう、なべのふた。「の」を挟むだけで急にRPGっぽくなるな。


ふだん履く用に革靴を買った。毎日のように革靴を履くのは高校の時以来だから10年ぐらいぶりということになる。さらっと長い時間がたったものだ。とにかく冠婚葬祭などを除けば極力スニーカーで押し通してきた。


履かなかった理由はいくつかある。まず動物の皮をはがしてるという時点でなんかこわい。接地面が小さくてかかとが痛くなる。高校の皮靴もスーツのおまけで付いてた革靴も履き心地が悪かった。知り合いの革靴愛好者の足が臭かった。裸足ではいてて爪を剥がしかけたなど。


だがほんの気まぐれで買った今の靴は、全然足の形にはあってないのに今のところ気に入っている。底がゴムだから踵も痛くなりにくいし、甲の部分が今まで履いた靴の中で一番広く取ってあるし、先端が突出しているので爪の剥がれる心配もないし。おかげで階段を踏み外しかけたが。


それに機能的な機能とは言えないが、歩くたびにポクポクとなる足音は、歩いてるぞ!という充足感が出ていい。これはsneakerでは定義上ありえないことで新鮮な楽しみがある。サンダルのズルズル擦る音も悪くないがこちらの方が快活な響きで活動的な気分になれる。こうした効果を考えるにピコピコ鳴るサンダルは子供に歩く楽しみを学ばせる発明かもしれない。


ただ歳をとって、走らなくなったことも大きいかもしれない。寿司にはワサビ、歌は演歌、とりあえずビールのように年齢を経るに従って自然と身体なり公式な生活様式なりにあった嗜好を持つようになっただけかもしれない。現実社会からのスニーキングミッションを辞める時期に差し掛かっているということか。




無題というタイトルは内容に合致しないし書きやすくもなかったのでやめます。